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自分が40代になったことが信じられない40代のために!

【書評】神様の御用人 1 ★★☆☆☆


 

神様の御用人 (メディアワークス文庫)

神様の御用人 (メディアワークス文庫)

 

 

 

とある書評で紹介されていたので読んでみたが、自分には合わなかった。
主人公の言葉が軽い。うわっつらをなでているだけに思える。

例えば「好き」と言う言葉は誰の言葉かで重みが違う。好きな人から言われるのか、嫌いな人からなのか、初めて会った人なのか、お互いよく知っている人なのか。同じ言葉であっても、それまでに至る関係性で重みが全く違う。その言葉を発した時の関係性が読者にちゃんと伝わっているかどうかが、言葉の重みに出ると思う。

その点でこの主人公の発する言葉は軽い。

神様とのあいだに、特別な関係を築けていない。いやいや付き合わされ、しぶしぶ依頼を聞き、その時に思いついた言葉を発する。性格はいいかもしれないが特筆するほどでもなく、言葉に意外性があって驚くようなことを言う訳でもない。普通の青年が現代社会で考えられるいいことを言っているだけ。

それを受け取る神様たちが現代人と大きくズレていてればそれはそれで刺さる言葉になることもあるだろう。ヤックデカルチャー。ところが残念ながら神様たち、あまりにも人間的すぎる。「人間も木の葉も同じ」と言いつつ、お参りに来る女の子が何を考えているのかと悩んだり、昔好きだった人間を今でも思っていたり、松飾が飾られなくなった家を気にしたり。

結局のところこの本においては神様と言いつつ中身は普通の人間であって、それは悪いことではないが、設定を活かしきれていないのも事実。なら普通の人間でいいじゃん。また御用人である主人公もいい人ではあるが、それ以上とは言えず、この本をざっくり一言で言うなら「人情噺」。それもあまりこなれていない感じの。

会話についても思わず笑ってしまう事もなく、黄金の口調についてはたまに乱暴になるのが、狙ってるけど外している感がある。
また主人公とその神職の友人の会話を読んだ時に、女性作家特有の「こんないかにもな会話しねえ」って感じがした。嘘くさい。