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【マンガ】【書評】アルスラーン戦記3 ★★★☆☆


 

アルスラーン戦記(3)

アルスラーン戦記(3)

 

 原作厨と言われそうだが、やはりキャラクターと服装とその世界に違和感を感じずにいられない。原作は明らかにイスラムから見た横暴で無教養なキリスト十字軍であったのだが、やはりかなりぼかしてある。

特にイスラム感をわざと減らそうとしているのか、アルスラーン側もヨーロッパの雰囲気。ファランギースだけがちょっとアラビアンナイト風で、さらに浮いている気がする。原作のセリフをかなり忠実に再現しているのは嬉しいが・・・うーん。 

 

原作を読んでいない人にとっては十分オモシロイと思う。

 

しかし、原作を超えているかといえばそれはないと思う。

 

理由としては、世界観が曖昧なことにある。

 

原作はイスラムから見た横暴で独善的なキリスト十字軍という、それまでの常識を否定する設定が素晴らしかった。現代日本では野蛮と思われているアラブ世界の文化・風習が実はとても洗練されたものであったり、現代の主流派であるキリスト教一神教ゆえの不寛容であったり無教養であったりと、反権力的・反メジャーである田中芳樹らしさが存分に出ていた。実は反対から見るとこうなのかもよ、と。

 

ところが、このイスラムのテロが続く時代、イスラムのすべてが悪いわけではないけれど宗教というデリケートな問題を避けるため、おそらくイスラムから見たキリスト教という視点を隠している。わざと擬似ヨーロッパ的世界内部のようにしている、と思う。

 

宗教対立・文化比較を取り除き、架空の世界に置き直しているのだと思う。ストーリーやキャラクタは原作をうまく取り込んで作っていると思うが、作品の背景的なところでうすらぼんやりしている感は否めない。

 

荒川弘田中芳樹もとても好きな作家であるだけに残念だ。