【書評】QED 百人一首の呪 高田崇史 ★★★☆☆
時間があったので数年ぶりに再読。
初読の時も思ったが、とても読みやすく状況説明等もわかりやすい。
ただ、それに反して人物の外見的特徴に対する説明がほぼなされておらずイメージが掴みにくい。身長体重、髪型、服装やクセなどを入れてほしかった。
作品のうち、6〜7割を占めるのが「百人一首の謎」についてなのはよいのだが、それが事件解決に繋がっていないのは気にかかる。
百人一首の謎が解けても、解けなくとも犯人探しに影響がない。
京極夏彦とよく比較されるが、こちらは一見関係のないように思える人文学的与太話が最終的に事件解決に繋がっており、完成度としてはやはりこちらが上。
井沢元彦の逆説の日本史が好きな方は、この百人一首の謎について気にいると思う。
井沢元彦と京極夏彦を足して割ったと言うのは的を射た表現。
また殺人事件についても、最終段階で目撃者の特殊な事情が明かされ、それが犯人特定の妨げとなってとなっているなど、ミステリーとして不満が残る。
こう言ったことは事前に読者に開示するなり、匂わせておくべきであった。エラリークィーンではないが、探偵と読者はできるだけ同条件で事件解決に臨みたい。
再読なのでネタは知ったうえで読んだのだが、目撃者の特殊事情についてはそれを思わせる記述はないと感じた。
この本以外にも、六歌仙と伊勢を読んでいるが、ここまで殺人事件と関係のない構成ではなかったので、多少は考慮したのだと思う(六歌仙についてはトリックがちょっとアレすぎたが、それはそちらにレビューしたい)
発刊からもう20年以上経っている小説なので、新たに読まれる方も少ないだろうが、それなりにオススメ