警官の血 (上)(下) ★★☆☆☆ 3人は親子である必要は本当にあったのか
内容紹介
読んだのはもう数年前になるのですが。
各所で高評価だったので、かなり期待して読みました。カテゴリーは【ミステリー】としていますが、ミステリー色は弱めの警察官の人間ドラマ。
うぉぉぉぉ、何というか、重い。
-----------以下ネタバレ------------
もう既読者だけだと思うので名前で書きますが。
清二はよかった。戦後の混乱の中警察官として生きていくことになった男のお話。彼が火事の夜に死んでしまったことがこのお話のメインの謎となるわけだが、悪くなかった。面白かった。清二にもその妻にも、そして戦後の空気がよかった。
民雄はその最初のシーンが一番よくて、その後だんだんと、うーん。
血のつながらない叔父たちによる申し出のシーンこそが警官の血を感じさせる、この小説の一番の場面だと思った。
その後の北大潜入も悪くなかった。清二の時代とは違った学生運動の空気、自分の望まない形ではあるが警官として生きていくのも面白く読めた。
ただその後のPTSD期はどうだったのかな。酔って女房に手を上げるなんて全く持って共感できないので、民雄は嫌いになりました。その後駐在さん期間に清二の死んだ謎にせまるところはようやくこの小説の本筋が流れ始めた感じで、いったい清二に何があったのか、読者に感じさせたと思います。赤柴孝志はあのときの少年である必要があったのかちょっと疑問。
そして和也。もうごめん。全然ダメ。加賀谷のくだりはいるの?寝取られとかいるの?最後も後味悪いしなぁ。どうなんだろうか。
作者は何を書きたかったのだろうか。警察官という存在を通してみた時代の空気だろうか。
エピローグにあるように警察官とは白と黒の境界線の上にたつ存在だと書きかたかったのか。
残念ながら全体を通しての一貫性に欠けているように感じられた。清二、民雄ともに早死にしてしまったため次代に伝達されたものが少ないように思う。三代にわたる警察官の血というものは、純粋な意味の血統だけではなく、父の背を見て育つ息子の姿ではないのだろうか。清二の死の謎という縦糸は通っているものの、それが枝葉末節に感じられ、各代にも父の遺志を受け継いだところが感じられず、ただ3人の警察官の話となってしまってはいないだろうか。
清二の話は人に薦めたい。
民雄も悪くなかった。
和也も後味は悪いが警察ものの小説としてはありかもしれない。
しかし3人は親子である必要は本当にあったのか、疑問。