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自分が40代になったことが信じられない40代のために!

【書評】元彼の遺言状 ★★★☆☆


 

元彼の遺言状

元彼の遺言状

 

本年度の第19回『このミステリーがすごい! 』大賞受賞作は、金に目がない凄腕女性弁護士が活躍する、遺産相続ミステリー! 「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」という奇妙な遺言状を残して、大手製薬会社の御曹司・森川栄治が亡くなった。学生時代に彼と3か月だけ交際していた弁護士の剣持麗子は、犯人候補に名乗り出た栄治の友人の代理人として、森川家の主催する「犯人選考会」に参加することとなった。数百億円とも言われる財産の分け前を獲得するべく、麗子は自らの依頼人を犯人に仕立て上げようと奔走する。一方、麗子は元カノの一人としても軽井沢の屋敷を譲り受けることになっていた。ところが、避暑地を訪れて手続きを行なったその晩、くだんの遺書が保管されていた金庫が盗まれ、栄治の顧問弁護士であった町弁が何者かによって殺害されてしまう――。

 

某ラジオに作者さんがゲストで出演されていて、その経歴(東大卒で元麻雀プロの弁護士)が気になって購入。久しぶりにミステリーを読みたかったし。

 

以下ネタバレありますので、ご注意ください。

 

まず、「自分を殺した人に財産を譲る。期間は3ヶ月とする」と言う奇妙な遺言をした理由が、「3ヶ月間の猶予を作るためだった」と言う点が、まずおかしい。
相続税の納付は被相続人が亡くなってから10ヶ月以内。つまり、なにもしなくても10ヶ月の猶予があるのです。この間に遺産分割協議書を作成し申告すればよし。この遺言書により逆に期間を狭めてしまっている。確実に3ヶ月の猶予を作りたいのなら弁護士を遺言執行人に選任し、3ヶ月たってから遺産分割協議なり、遺言書の公開をすればいいだけの話。実際身内が亡くなられた方はわかるでしょうが、3ヶ月ってあっという間ですからね。実際3ヶ月目くらいからようやく相続人による協議が始まる事も珍しくない。

この元彼の遺言状こそがこの小説の一番の目玉なのに、これはダメ。作者さんは弁護士資格があっても税法には疎いようです。

また犯人探しについては、わかりやすすぎる。名前が出てきて以降、何も動きがない人がこの人だけなんだもん。メタ的な読み方ですけど、わかりやすすぎ。
逆に登場人物は多すぎ。マギレのつもりなのか女性が数人出てくるけど、キャラクタ的に一人にまとめられると思う。

靴磨かれてないことを指摘されただけで激怒する一流弁護士とか、妻が不倫していたことがバレるのが嫌で殺人を犯す人とか、ちょっと弱い。靴磨きの話は犯罪理由の補強なんでしょうが、男性からしてもあまり頷けるものではなかったかな。

主人公の性格について、好き嫌いあるでしょうけど、嫌われるってことそれだけちゃんと書けていることの裏返しでしょう。ちょっと言ってるほどしっかりしてなくて、ブレブレですけどね。ゆさぶりに弱い。

でもまあまだ処女作?でこのレベルはすごいと思うし、将来に期待ということで★★★☆☆。