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【マンガ】アルスラーン戦記 荒川弘/田中芳樹 ★★★☆☆ 中東vs欧州や、宗教色を消してマイルドになった感じ


 

kohidekazu.hatenablog.com

 

 

中高生の頃、リアルタイムで田中芳樹の本の発売を楽しみにしていました。銀英伝の外伝5巻を首を長く待っていました。
百姓貴族5巻と銀の匙も首を長くして待っています。

しかし

このコミカライズではいくつか残念に感じることがあります。

まず、舞台の無国籍化。
原作では「文化豊かな中東から見た田舎者のキリスト教の傲慢さ」と言う視点がありました。
当時10代だった私はその視点にかなりの衝撃を覚えました。中東からみた十字軍です。

今この荒川弘アルスラーン戦記だけをを読んで「十字軍」を思い浮かべる人はどのくらいいるのでしょうか。

 

アニメ化のためなのか、アルスラーンダリューンナルサス、そして敵であるルシタニアもまでも無国籍化してしまい、ファランギースの衣装に一部痕跡が残るのみ。ただのファンタジーでしかなくなってしまい、あの自分が思っていた立ち位置が崩れたような感覚がなくなってしまったのが残念です。

原作ではルシタニアがパルスを攻めたのは、イアルダボート教でパルスが約束された土地だからでした。現実世界で言うエルサレムみたいなものでしょう。そこに住んでいるパルス人のことも考えず攻め込んできた野蛮人、神のためという名目で自分のことばかり主張し他の神や文化を認めない田舎者、それがルシタニアでした。
荒川弘版ではあえて十字軍、ひいてはキリスト教イスラム諸国を思い起こさせないようにしている気がします。うるさい時代ですからね。ただ物語がマイルドになってしまい、原作にあった文化的・歴史的側面がなくなったのは残念です。

それから、今回の6巻辺りから目につくのが、登場人物が場面によっては別人のように感じること。
「脱兎」のごとく逃げ出すナルサスや、アルフリードを紹介されたときのエラムの顔など、荒川弘マンガでよく見る表現です。私もハガレン銀の匙でみるのは大好きですが、今回はそのシーンだけに違和感を感じます。

 

 

セリフなどは原作に忠実なので、そこのシーンだけ別人が演じているような気がします。見た目が同じ別な人です。荒川弘田中芳樹のキャラのズレを感じます。

同じく現在連載中の藤崎竜銀河英雄伝説ではオリジナルストーリーが多く、原作でもないアニメでもない今までと違ったヤン・ウェンリー像となっていますが、こちらは場面によるキャラのズレを感じません。一貫して「フジリューヤン・ウェンリーであり、ラインハルト」です。

 

 

 

原作厨ではありません。それどころか「これぞ荒川弘によるアルスラーン戦記」を読んでみたい。もっと全篇に荒川弘臭を出して欲しい。今回のアルスラーン戦記では、それが無国籍化した外見にしかあらわれておらず、たまにでるギャグシーンでは違和感を感じます。

セリフ/ストーリーなどはかなり原作に忠実ですが、背景である「中東vs欧州」がなくなっているため物語がマイルドになってしまい、また部分的な荒川弘テイストが他のセリフなどと整合性が取れていないようで、今ひとつ楽しめていません。

 

amazonにアップしたのがこれ。

 

文中にもあるように、あえて十字軍の雰囲気を消しているし、宗教色も除去してる、と思う。もちろんボダンは重要キャラだしまったく取り除くわけにはイカないけど、原作と比べてルシタニアの侵攻理由があいまいなのがよくわかる

 

原作とムリに比較する必要があるの?って意見もわかるが、面白いところをスポイルされているんじゃないかなあ

 

昔の田中芳樹は「反権力」がスゴイわかりやすい作家で、ナルサスなんかはその典型だったし、創竜伝でも最後の方は酷いもんだった(未完だが

 

創竜伝 文庫 1?13巻 完結セット (講談社文庫)

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それがこの荒川弘アルスラーン戦記では例えて言うなら、「にんにくレバニラ炒め」だったはずが、「もやしとレバーのソテー」になってしまったというか。

あれ?にんにくとニラ入ってないの?あれ?中華風だったけどフランス風?みたいな

 

もちろん荒川弘と言う料理人の腕がいいので、「もやしとレバーのソテー」もとても美味しいんだけど、なんか違うんだよねってのはある。「にんにくレバニラ炒め」を食べてない人、思い入れがない人にとっては関係ないことだけど。

 

キャラクタのズレ

どこの書評で読んだか忘れたが、「荒川弘は善人だ。キャラクタが総じて闇がない」というような事を読んだ。結構反発を受けていたが俺は結構納得した。

sonicch.com

 

追記

これだ。岡田斗司夫うまいこと言うな

「そんなことはない」と言われるかもしれないが、人生経験を積まないとわからないことがある。それを20代で理解する人もいるし、70になっても理解しない人もいる。

 

でも基本的に若者にはわからないこと、分からない人が多いのは事実なのだ。

恋愛、失恋、近親者の死亡、肉体的・精神的苦しみ、経験してみて初めてわかることがある。

 で、46年間、恋愛失恋結婚育児離婚ほか父・祖父母の死亡や就職・仕事など、10~30代より多くの経験をしているであろう自分も思う。

荒川弘は善人で闇がない。

 

荒川弘は素直で善良なまっすぐな人だと思う。対して田中芳樹はひねくれ者なのだ。それもあまりよろしくない方にひねくれていると思うのだ。

 

だから田中芳樹を親としたキャラクタは総じてひねくれている。それが魅力だが、荒川弘に落とし込んだ時、しっくり来ないのはそれが原因ではないだろうか。

 

まあしっくりきていないのは原作のアルスラーン戦記に思い入れが強い人だけだとは思うけども。

 

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